糖度が高いと本当に甘いのか
「このサツマイモは糖度が高いので、とても甘いです」といった、何気ないアピールを聞いたことはありませんか？ 確かに「糖度が高い」と言われると非常に甘くておいしそうだと思えますが、それは事実なのでしょうか？意外な糖度の事実と、安納芋のおいしさについて解説したいきます。
糖度とは
そもそも糖度とはなんでしょうか。言葉から判断すると「糖の度合い」を示すバロメーターのように思えます。 この考え方は間違ってはいませんが、正しいとも言い切れません。実は糖度の定義は、検査する食品の種類などによって異なっているのです。 例えば、果物や野菜の糖度の場合は「糖含量（果糖やブドウ糖、しょ糖などの量）」を示しますが、果実などを加工してできたジャムの場合は「可用性固形分（商品に含まれる糖）の割合」を示すと言われています。どちらも「甘さを示すバロメーター」ですが、その計算方法や考え方が異なるのです。 例えば生の安納芋と、安納芋のジャムを使ったものがあったとすると、糖度は大きく異なるはずです。 前者は安納芋が持つ果糖などの量のことを示し、後者はジャムとして美味しくするために使われた、調味料としての砂糖などが含まれています。 つまりは野菜なら野菜、ジャムならジャムで糖度の基準が異なっているのです。
糖度が高くても甘く感じないってホント？
ずばり、糖度が高いから甘いとは限りません。イチゴとレモンはどちらも果物ですので、生の状態で糖度を確認したのであれば、その数値の考え方や算出方法は同じはずです。 しかし、「糖度が高ければ甘いわけではない」のです。何故ならば「レモンとイチゴの糖度は、平均的にはほぼ同じ」であるからです。 でも、「レモンの方が明らかに酸っぱいじゃないか！」と思われた方も多いことでしょう。答えはその「酸っぱさ」にあるのです。 人間は甘味だけでなく、酸味や苦みといった様々な種類の味覚を持っています。また、果物にも甘味や酸味などが様々な割合で含まれています。 我々はその複雑な違いを感じることができるため、「酸味も甘味も強いものは、甘いよりも酸っぱい」と感じますし、「酸味が低く甘味が強いものは、とても甘い」と感じるのです。 これが、「レモンとイチゴの糖度は同じという謎」のカラクリです。 そしてこれは、甘くておいしいといわれる安納芋にも、同じようなことが言えるのです。
安納芋と他の芋の糖度の差はどれくらい？
「糖度が高ければ甘くて美味しいとは限らない」とは先ほど説明した通りですが、「糖度が高くて美味しい」と言われる安納芋の場合はどうなのでしょうか。 例えば、一般的なサツマイモと安納芋の糖度の差は、生の状態ではほとんど変わりません。 品種などにもよりますが、おおよそ10～15度程度で決して明確な差はないのです。 そして安納芋は「焼いた時が、ねっとりと甘くて美味しい」と言われて有名です。 糖度は加熱することで変化しますので、「調理した後は安納芋の方が高い数値になるんじゃない？」と期待したいところですが、これもまた誤りです。 一般的なサツマイモと安納芋の双方において、平均しておおよそ20～30度まで上昇すると言われています。 つまり、糖度という尺度だけでは、その絶妙な甘さや美味しさを証明することは、極めて困難なことなのです。
安納芋の糖度や甘さについて
「糖度では証明できないとして、安納芋のおいしさや甘さは、一体どうやって生まれているの？」と思われた方も多いかもしれません。 食べてみたら美味しさが分かるとは言え、やはり原理として理解したいものですよね。 先ほど「糖度だけで甘さが決まるわけではない」と説明した時、酸味などが複雑に影響していることを述べました。 そしてサツマイモや安納芋の場合は、更に含まれている水分の量が大きな影響を与えていると考えられます。 サツマイモ類は、基本的にその身に火を通して食べます。 この調理の過程で、イモの中に含まれる水分はどんどんと外に飛ばされてしまい、うっかりするとパサパサで食感がよくない仕上がりになってしまうこともあります。 ところが安納芋は、他のサツマイモより含まれる水分が非常に多く、上手く水分を閉じ込めて加熱することで、ねっとりとしたクリームのような仕上がりになります。 この独特の食感、滑らかさが、我々の感じる甘さに大きなプラスの効果を与え、「安納芋は甘くて美味しい」という高い評価に繋がると考えられるのです。
